谷川俊太郎は「自分はベートーヴェンのレコードを聞いていて、『ああ、僕は生きられる』と思った」と語った。
中学のとき使っていた国語便覧にそう書いてあった(ような気がする)。あの頃、そういう感覚はまだなく、「生きられる」という思いはわからなかった。でもそう思える時が来ればいいとは思っていた。待ち望んでいた。
あれから十五年。「彼」はまだ、来ない。