『ノスタルギガンテス』を読み始めた

寮美千子の本。

ノスタルギガンテス

ノスタルギガンテス

やっぱりいいな、この人。素敵だ。

 その晩、夢を見た。
 夢の中で、木は逆さまに立っていた。ぼくは、ひどく不安な気持ちで木を見あげていた。夜だった。空に向かって木の根が伸びていく。するすると生き物みたいに。無数に枝わかれして、どこまでも空を遡っていく。何光年もの高みまで時を遡る。空は透明な毛根でいっぱいになって、その尖が銀河に触る。星のひとつひとつを半透明の膜で包みこんで光を吸いあげる。光が流れこむ。からみあった毛根の尖が微かに光って、光の樹液がまるで河を逆流してくる水のように地上めがけて押し寄せてくるんだ。光と光は束ねられ木の根へ流れこみ、それがまた合流して木の幹から眩しい濁流になって地下へ流れこんでいった。

ちょっと長いけど引用。きれい。「空は透明な毛根でいっぱいになって、その尖が銀河に触る」なんて、いいじゃないか。